こんにちは。ツクリエの古里です。
9月に入り、朝晩の風に秋の気配が混じるようになりました。とはいえ鹿児島はまだ台風の季節の真ん中で、現場では毎週の予報を見ながら段取りを組み直しています。この時期のご相談で、ここ数年いちばん増えたと感じるのが「平屋で考えたい」というお声です。
平屋はご希望として挙げていただくことが多い一方で、いざ図面に向き合うと迷われる方が多い建て方でもあります。部屋がすべて同じ階にあるということは、間取りの良し悪しが毎日そのまま身体に返ってくるということでもあるからです。今回は大工として現場に立ってきた立場から、平屋の間取りを動線と収納という二つの切り口でお話しします。
この記事のポイント
- 平屋の間取りは部屋数から決めず、朝起きてから寝るまでの動きを線にすることから始めると失敗が減ります。
- 洗う・干す・畳む・しまうを1か所に寄せると家事の移動が短くなり、平屋はこれがつくりやすい建て方です。
- 収納は広さの数字より位置が大切で、使う場所から数歩以内にあるかどうかで使われ方が変わります。
- 台風や桜島の降灰で窓を開けにくい日があるため、高気密高断熱と計画換気を土台に設計しています。
なぜいま、薩摩川内・姶良で「平屋」を選ぶ方が増えているのでしょうか?

「平屋を希望しています」とおっしゃる方に理由をうかがうと、お答えはだいたい三つに分かれます。階段の上り下りがないこと、家族の気配が届きやすいこと、将来の手入れがしやすいことです。
階段については、小さなお子様がいらっしゃるご家庭と、ご両親との同居を考えていらっしゃるご家庭の両方から挙がります。どちらも二十年後、三十年後を見据えてのご判断です。家族の気配という点では、廊下で仕切られた個室が並ぶ家よりも、ひとつの床でつながっている家のほうが声が届きやすい。お住まいになった方から、あとになって言っていただくことが多い感想です。
手入れのしやすさは、現場を見てきた実感とも重なります。外壁の塗り替えや屋根の点検で足場を組む規模が変わりますし、雨樋の詰まりに気づくのも早くなります。
もうひとつ増えているのが、面積を無理に広げず、そのぶん性能と素材に予算を寄せたいというお考えです。住宅ローンの金利は上昇の局面にあると報じられていますが、金融機関や時期によって異なりますので、そのつど金融機関でご確認ください。ただ、限られた総額で何を優先するかという問いが以前より前に出てきているのは確かで、コンパクトにまとめた平屋はその答えのひとつになりやすいと感じています。
平屋の間取りは、どこから考えはじめるとよいのでしょうか?

間取りの打ち合わせは、たいてい「部屋はいくつ必要ですか」から始まります。ただ平屋については、この順番を一度あとに回していただくようお願いしています。先にうかがいたいのは、朝起きてから夜寝るまでの一日の動きです。
何時に起きて、誰が最初に洗面台を使うか。朝食の支度と洗濯機を回すのはどちらが先か。帰ってきて買い物の袋をどこに置くか。ここまでを言葉で並べていただくだけで、必要な部屋とそのつながり方がかなり見えてきます。
この順番をおすすめするのは、平屋には逃げ道が少ないからです。2階建てなら、1階で解決できなかったことを2階に持ち上げる手が残ります。平屋は同じ床にすべてを並べますので、線が長くなれば毎日その距離を歩くことになります。逆に言えば、線を短くできたときの効きがはっきり出る建て方でもあります。
実際の打ち合わせでは、方眼紙に四角を描くより先に、この一日の流れを書き出したメモを一緒に眺めます。そのうえで「では洗面と洗濯機とクローゼットを隣どうしにしてみましょうか」と図面に落としていく。順番を逆にすると、配置が決まったあとで不便に気づき、大きな描き直しが必要になります。進め方は家づくりの流れのページでもご説明しています。
家事が軽くなる平屋の動線は、どうつくるのでしょうか?

家事のなかで間取りの影響をいちばん受けるのが洗濯です。洗う、干す、畳む、しまう。本来ひと続きの作業ですが、多くの住まいでは洗面所と物干し場とタンスが別の場所に散っていて、そのたびに抱えて歩くことになります。
ですから平屋では、この四つをできるだけ一か所に寄せることをご提案しています。洗濯機のある洗面脱衣室のとなりに、物干しができる小さな部屋を設ける。そのさらに隣に、家族の衣類をまとめて掛けておける収納を置く。こうすると、乾いたらその場でハンガーごと隣に移すだけで一日の洗濯が終わり、畳む作業そのものが減ります。
鹿児島でこの形をおすすめする理由は、外に干せない日が少なくないことです。台風の接近する時期はもちろん、風向きによっては桜島の灰が気になる日もあります。室内にきちんと干せる場所があるかどうかで、天気予報との付き合い方が変わります。
そしてここが性能の話とつながります。室内干しは、湿気を室内に出す行為です。窓を開けられない日に湿気だけが溜まれば、結露やにおいのもとになります。当社が高気密高断熱と計画換気、とくに給気も排気も機械で行う第一種換気を土台にしているのは、窓を閉めたままでも計画どおりに空気を入れ替えられる状態をつくるためです。考え方は住まいの性能のページにまとめています。
もうひとつ忘れられがちなのが荷物の動線です。玄関の土間から食品庫へ直接入れる小さな抜け道をつくるだけで、買い物帰りの体感はずいぶん変わります。
収納は「量」より「位置」。どこに、どれだけ用意すればよいのでしょうか?

収納については「どのくらいあれば足りますか」とよくご質問をいただきますが、広さの数字だけでは答えが出ません。同じ広さの納戸でも、使う場所から遠ければ物は入ったまま出てこなくなり、近ければ毎日開け閉めされます。ですから量よりも位置を先に決めます。
目安は、使う場所から数歩以内に置くことです。掃除機はリビングのそば、文房具や書類はダイニングのそば、タオルは洗面所のなか。当たり前のようですが、図面の上では収納がいちばん後回しになり、余った隙間に押し込まれがちです。
この土地でとくに効くのが、玄関の土間収納です。長靴、傘、園芸や釣りの道具、ベビーカー、そして灰を掃くための外用のほうきやちりとり。土のついたものや濡れたものを室内に上げずにしまえる場所があるだけで、玄関が散らかりません。
平屋ならではの手も一つあります。屋根の下の空間です。勾配天井にして高さを楽しむこともできますし、一部を小屋裏収納にして季節ものの置き場にすることもできます。年に一度しか出さない行事の道具などは、毎日使う収納と分けておいたほうが暮らしが整います。実例は施工例(平屋×ロフト・永利町)でご覧いただけます。
平屋は暗い・風が通らない、というご心配にどうお答えしますか?

平屋をご検討中の方から必ずいただくのが、この二つのご心配です。すべての部屋が1階にあるということは、隣の建物や塀に光をさえぎられやすいということでもあります。
ただ、これは設計で手が打てる部分です。まず考えるのは形です。四角い箱の中央に部屋を並べると、どうしても真ん中が暗くなります。そこでL字やコの字に配置して中庭を挟んだり、建物の中ほどに光を落とす小さな庭を設けたりします。中庭に面した窓は、道路や隣家からの視線を気にせず開けられるという良さもあります。
次に高さです。平屋は上に階がありませんから、天井を屋根の形に合わせて上げられます。その高い壁面に窓を設ければ、隣家の屋根より上から光を入れられます。高い位置から光を落として奥まで届かせる手が使えるのは、平屋の強みです。
通風については、窓の数ではなく入口と出口の関係で考えます。風の入る窓と抜ける窓が向かい合っていなければ、窓が多くても空気は動きません。そのうえで、この土地では窓を開けられない日が一定あります。だからこそ窓に頼らない換気の仕組みを土台に置き、開けたい日には気持ちよく開けられて、開けられない日も空気が動いている状態を組み立てます。設計者と形をつくっていく進め方は建築家との設計(design casa)のページでご紹介しています。
台風と降灰、そして地震に、平屋の設計でどう備えるのでしょうか?

平屋は、地震の揺れに対しては有利な面を持っています。建物の重心が低く、2階の重さが1階にかかりませんので、同じ考え方で設計すれば構造に無理がかかりにくい。今年7月に熊本県熊本地方で発生した地震では薩摩川内でも強い揺れを感じ、あらためてお問い合わせをいただきました。あのとき現場を回って感じたのは、備えは建ててからでは足せないということです。
いっぽう風には注意が必要です。平屋は屋根の面積が大きく、軒を深く出すと日射はよく遮れますが風は受けやすくなります。軒の出し方、屋根の勾配、屋根を支える構造は意匠と一緒に決めていきます。大きな窓を取りたい場所と、壁を残して建物を支えたい場所はしばしばぶつかります。この調整を間取りの段階で済ませることが、あとから効きます。
地盤も設計と切り離せません。薩摩川内から姶良にかけてはシラス台地が広がり、水はけや造成の履歴によって地面の状態はかなり違います。土地探しの段階から一緒に見せていただきたいとお願いしているのは、このためです。
性能の面では、2025年4月から新築住宅に省エネ基準への適合が義務づけられ、断熱性能をどの水準で考えるかが標準的な話題になりました。国の支援としては、国土交通省がみらいエコ住宅2026事業として、省エネ性能の高い住宅の新築などを対象とする制度を公表しています。ただ補助制度は年度ごとに要件も予算の状況も変わりますので、そのつど公式窓口と金融機関でご確認ください。
まとめ|平屋の心地よさは、図面の一本の線から始まります
平屋という選び方そのものが暮らしを楽にしてくれるわけではありません。同じ平屋でも、洗濯物を抱えて家の端から端まで歩く家と、その場でしまい終わる家があります。違いをつくるのは、面積でも設備でもなく打ち合わせで引いた線です。
ですから私どもは、部屋の数をうかがう前に一日の動きをうかがいます。収納は広さより先に位置を決め、窓は枚数より入口と出口の関係で考えます。そして台風や灰で窓を開けられない日を前提に、換気の仕組みを土台に置きます。どれも建ててから足せるものではありません。
大工として現場に立ってきた私が設計と施工の両方に責任を持ちたいと考えているのは、この「図面の段階でしか決められないこと」を現場の手触りと切り離したくないからです。平屋をお考えの方は、まだ何も決まっていない段階でお声がけください。そのほうが、できることがずっと多く残っています。
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よくいただくご質問
Q. 平屋は同じ広さの2階建てより建築費が高くなりますか?
A. 延床面積が同じ場合、平屋は屋根と基礎の面積が大きくなるため、その部分の費用は増える傾向があります。一方で階段や2階のトイレ・給排水が不要になるなど減る部分もあります。金額は間取りと仕様で変わりますので、プランと同時に概算をお出しして比べていただくのが確実です。
Q. 間取りの打ち合わせでは、何を先に決めるとよいでしょうか?
A. 部屋数や畳数よりも、朝起きてから寝るまでの動きを先に言葉にしていただくことをおすすめしています。洗濯をどこで干したいか、買い物の荷物をどこで降ろすか。この順番で進めると、あとから動線を直すための大きな変更が起きにくくなります。
Q. 桜島の降灰があると、窓を開けて換気ができない日がありますか?
A. 風向きによっては窓を開けにくい日があります。当社が高気密高断熱と計画換気(第一種換気)を土台にしているのは、窓を閉めたままでも計画的に空気を入れ替えられる状態をつくるためです。洗濯物の室内干しスペースも合わせて設計段階でご相談ください。
Q. 平屋は間口が広い土地でないと建てられませんか?
A. 間口が限られていても、細長い配置や中庭を挟む形、一部にロフトを設ける形など取り方はいくつもあります。土地の形と方位を見ないと判断できませんので、土地探しの段階からご相談いただくほうが選択肢が広がります。
Q. 補助金や住宅ローンの金利は、どこで確認すればよいですか?
A. 補助制度は年度ごとに要件と予算が変わり、金利は金融機関と時期で異なります。当社では金額を断定せず、国土交通省などの公式窓口と、お取引先の金融機関でそのつどご確認いただくようお願いしています。手続きの段取りはご一緒に整理します。
ツクリエについて
ツクリエは、鹿児島県薩摩川内市を拠点に注文住宅を手がける工務店です。大工出身の代表のもと、仕上がってからは見えなくなる部分まで手を抜かない家づくりを続けています。設計と施工の両方に責任を持ち、高気密高断熱と計画換気を土台に、薩摩川内市・姶良市を中心とした鹿児島県内で住まいづくりのお手伝いをしています。姶良市にはモデルハウスがあり、選べる仕様の一部は実際に体感していただけます。
私たちの4つの強み
- 住まいの性能……高気密高断熱と第一種換気を土台に、鹿児島の夏と冬に向き合います。
- 建築家との設計(design casa)……設計から一緒に考えたい方のための、建築家設計の選択肢をご用意しています。
- 家づくりの流れ……土地探しから引き渡しまでの道筋を、はじめから最後までご一緒します。
- スタッフ紹介……誰が担当し、誰が現場に立つのかが見える体制でお引き受けします。
栄匠建株式会社 古里 公司


